消防署では救助技術指導会に向けて熱い訓練が続いていますが、気温も高くなってきました。
もうすぐ梅雨入りですが、梅雨入りすると湿度が高くなり不快指数が高まりますし、梅雨空け後は気温がさらに高くなり熱中症の危険が増加します。
今回は我々消防隊員の熱中症対策についてご紹介したいと思います‼
熱中症搬送者どれくらい?

水色が平成29年、赤が平成30年の搬送者数です。

救急隊の悲鳴が聞こえてきますね(´;Д;`)
総務省消防庁では毎年熱中症のシーズンに調査を行っています。
消防署の救急隊が熱中症(疑いを含む)の傷病者を搬送した数を、毎週月曜日に総務省消防庁に報告しています。
その集計結果を受けたマスコミがニュースとして流しているわけです。
熱中症ってどんな症状?
昔は日射病や熱射病という言葉がありましたが、現在は熱中症で一括りりなりました。
熱中症には大きく3つの分類があります。
Ⅰ度: 立ちくらみ、筋肉痛、筋肉の硬直、大量の発汗
Ⅱ度: 頭痛、気分の不快、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感
Ⅲ度: 意識障害、けいれん、手足の運動障害、高体温
熱中症で死亡するケースもありますので本当に注意が必要です。

対処方法は下のフローチャートを参考にしてください。

消防士の対策は?
私たち消防職員が火災現場で着用する防火服は、炎から身を守ってくれる代わりに熱がこもりやすく非常に暑いです。

うちの職場も上の防火服を採用しています。
最近の防火服は機能性が向上しており上衣の内側に冷却剤を入れるポケットが付いています。がしかし、それでも暑いのには変わりありません。※冷却材の有効活用法については様々な研究が進められています。
ヒートストレスに耐える訓練もこなしてはいますが、現場活動が長時間に及べば熱中症は避けられない状況も多々あります。
我々消防職員に対しても国から採算に渡り通知分が発出され注意喚起させられています。
消防職団員の安全管理等(熱中症対策)の再徹底について 平成 30 年6月 13 日
ちなみに消防隊員はできる限り熱に対応した身体をつくっておく必要がります。
そのため、あえて灼熱の炎天下ですべての装備を着装して訓練を行ったりします。
参考動画はコチラ
アイススラリーを使った水分補給
熱中症の基本的な対処法として水分補給がありますが、最近では目覚ましい商品がでました。

アイススラリーご存知でしたか?
大塚製薬は常温保存が可能な液体を「凍らせてスラリー状にする」独自の技術を開発しました。
この技術が我々消防隊員の熱中症対策に効果を発揮します。
北九州市消防局が行った研究が専門誌で紹介されており、スラリーについても紹介されていました。( 消火活動時の適切な水分補給についての検討 )

アイススラリーと通常の飲料を飲んで運動し、
深部体温の上昇について比較した実験です。

この実験では、活動前にアイススラリーを飲んだ場合、
深部体温が0.5上昇する時間が約5分長くかかっており、熱中症警戒体温付近に到達するまで時間が長くなっています。
つまり、活動前にアイススラリーを飲めば、活動時間の延伸と深部体温の上昇を妨げ、結果的に熱中症の対策に期待が持てるわけです。

実際に試してみた感想として、活動前に冷えたスラリーを飲むことで、体内が冷えるので活動して身体が熱くなるまで時間がかかるのは体感できましたよ。
こんな冷却法もある
さて、お次は熱くなってしまった身体を強制的に冷やす方法を紹介します。
熱中症の対処法に「衣服を緩め冷やす」という項目があります。
車の冷却系統を参考にしてオリジナル冷却法を考えてみました。


自動車のオイルの流れと人間の血液の流れは似ていますね。
先ほどの防火服を思い出して下さい。
熱から身体を守るためほどんどが覆われていますので、体温が上昇して簡単に露出できるのは頭部と手ぐらいです。
ヒートストレスが高まってきたのを感じたら安全な場所で速やかにヘルメットを離脱しましょう。
頭部には非常に多くの血管が走行しているので、ヘルメットを脱ぐことで十分な放熱効果が期待できます。


頭部の毛細血管の密集度がスゴイでしょ。
オリジナル冷却法を紹介
次に簡単に露出することができる手を冷やす方法です。
用意するものはバケツと氷水だけ。
ここに熱くなった手を入れ数十秒冷やしてみてください。
冷却された血液が全身を冷やすのが実感できると思います。


特に防火服を着た訓練時にはおススメですよ。
訓練がはかどりますよw
まとめ
熱中症を防ぐには身体の深部温度(体内の温度)を38度以下にすることが大事です。
そのためには、
- 活動後は速やかにヘルメットを脱ぎヒートストレスをコントロールする。
- 電解質を含む適切な水分補給(アイススラリーは有効)
この二点をしっかり抑えておけばミイラ取りがミイラになることは極端に減少します。
一般市民が行う熱中症対策方法は比較的普及しているので、今回は視点を変えて我々消防隊員が行っている熱中症対策を紹介してみました。
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