消防職員なら誰もがあこがれる救助大会、ロープを渡ったり、登ったりと派手な行動が多いため、訓練中には市民からの熱い視線を感じることも結構あります。
実際の訓練は過酷で、体力自慢の多い消防署で代表枠を勝ち取るのは簡単ではありません。
そこで今回は、消防歴10年を超える中で培った救助大会勝ち残りのヒントを紹介します。
若年隊員には嬉しい情報が満載ですよ‼
救助技術指導会(救助大会)の目的と実際
各都道府県によって多少の違いはありますが、実施要綱などで目的がうたわれていますね。
概ね以下のとおり。
複雑多様化する所諸災害に備え、消防が行う救助活動の万全を期すため、日頃の訓練成果の披露とあわせ、知識及び技術の普及向上並びに指導者の育成を図り、安全且つ確実な救助技術の確立を目的とする。
沖縄県救助技術指導会 実施要綱より
言い換えると、
あらゆる災害に備えて、安全で確実な救助の訓練を行い、その成果をみてもらいましょう。
という感じです。

日本語って難しいですよね~(^^;)
しかし、視点を変えてみてみると
救助技術指導会は年に一度の大会で、勝てば九州・全国大会へと出場することができます。
つまり、各種競技大会と同じような構図になっているのがわかります。

うちの所属では4月末に署内選考会を行いました。
今は、勝ち残った隊員たちを応援しながら安全監視を行っています。
ピリオダイゼーション
我々社会人は学生時代のように無限の時間はありませんので、なるべく効率よく訓練をこなしていく必要があります。
そこで応用したいのがピリオダイゼーションの概念です。
ピリオダイゼーションとは
シーズン中の最も重要な試合でピークパフォーマンスが発揮できるようにするため、年間のトレーニングをそれぞれ異なる目的と方法をより小さな管理しやすい期間に分割すること。
学説(Stone et al., 1981)より

救助技術指導会がスポーツなどの競技大会と同じ性質なら
この論文も適応することができるはずですよ(人´∀`)
ちょうど、この記事を書いているときに柔道日本代表の大野選手のコメントがニュースで流れていました。
大野将平、“原点回帰”で頂点目指す 世界選手権代表が会見/柔道「日本武道館で試合をすることが好き。(残りの3カ月間は)心のスタミナ、我慢の部分を蓄えて稽古の量と質を上げる。最後は試合にピークとコンディションを合わせたい」
サンスポ 2019.5.5 20:22
この言葉に全てが詰まっています。
練習でブイブイ言わせても大会で勝てなきゃ意味がないんですね。
大会に照準を合わせて、トレーニングを計画・実行することの重要性が分かります。

これがまた簡単じゃないんですが。(゚ω゚)ノ ハィ
その他にもあらゆるスポーツに応用されています。

ボディビルダーの筋肉は使えないの!?
ピリオダイゼーションって言われると難しいと思いますので一つの例をご紹介します。
僕は趣味でボディビルをやっているのは前回の記事で書いていますが、
「デカくて使えない筋肉でしょ」と言われることがたまーにあります。苦笑
しかし、これは全くの論点のずれた意見なんです。
結論からいうと、デカい体を早く動かせるか否かはトレーニング次第です。
実際デカくても動きの速い人はいくらでもいますよね。笑
デカい身体を使える身体にするトレーニングが必要です。
使える筋肉、使えない筋肉の違いはピリオダイゼーションを理解すれば納得できるはずです。
トレーニングの負荷量と反復回数の関係

ここで押さえておきたいのは、トレーニング目的次第で内容が異なってくることです。
上のイラストでは、パワーリフティングとマラソンで比較してみました。
極端な例えですが、下の図で言うと、パワーリフティングが表の上部にくるのに対して、マラソンは表の下部分のトレーニング内容になります。
※RM=繰り返し可能な回数
最大筋力(1RM)に対する割合(%) | 最大反復回数(RM) | 期待できる効果 |
100 | 1 | 集中力(神経系) |
90 | 3~4 | |
80 | 8~10 | 筋肥大・筋力 |
70 | 12~15 | |
60 | 15~20 |
筋持久力 迅速に行えば パワートレーニングに。 |
50 | 20~30 | |
1/3 | 50~60 |

上の2種目は、同じ運動というくくりでも、
全く違うトレーニング内容と言っていいでしょう。
基本的なピリオダイゼーションの形
ピリオダイゼーションは、ピリオドを打つように期間を区切るためトレーニング内容が異なります。
一年を通してみると、大会当日が最大パフォーマンス(ピラミッドの頂点)となるように計画をたてないといけません。
用語で説明すると、次のような順序になります。
① 解剖学的適応(身体を目覚めさせる)
② 筋肥大(デカくする)
③ 筋力(強くする)
④ 転換期(パワーまたは筋持久力へ変換していく)
⑤ 維持期(大会に向けた微調整期間)
⑥ 休息期(①、②に戻る)
①~③、⑥はオフシーズンのトレーニングで④、⑤はシーズンインのトレーニングです。

オフシーズンとオンシーズンでトレーニング内容が全く違ってきます。
オフは身体づくり、
オンはオフシーズンで作った身体を維持し大会でピークを出せるようにする。
というイメージです。
消防的ピリオダイゼーションの例
さて、次は基本的なピリオダイゼーションを消防的に応用してみます。
救助技術指導会の各種目によって多少の違いがありますが、基本的には次のような形になります。

これは年間を通したイメージです。
仮に、大会当日が5月31日なら⑤の移行期は5月上旬に、ピーク期は5月下旬になるように逆算して調整しましょう。
より具体的にすると
大きく二つに分けと、体力とつける時期と、技術を磨く時期です。

はしご登はんで説明しましょう(。・Д・)ゞ

7月〜1月 ⇨ 通常の訓練
オフシーズンのトレーニング ⇨ 技術<基礎体力
2月〜4月 ⇨ 指導会向けのトレーニングに徐々に切り替えていく。
シーズンインのトレーニング ⇨ 技術=基礎体力
5月 ⇨ 救助指導会に向けて実践的なトレーニング(実際の種目などのタイムトライアルなどで
疲労の蓄積化を避ける )。 ⇨ 技術>基礎体力
大会終了後 ⇨ 休養期(1〜2週間程度)

各都道府県の大会で上位入賞すれば
さらに訓練が続きます。
救助技術大会等出場決定!!
6月~9月 ⇨ 技術訓練の質・量を増やしていく
シーズンインのトレーニング ⇨技術=基礎体力 ⇨技術>基礎体力
(基礎体力、筋力、持久力を維持しながら技術訓練を取り入れる)
大会終了後 ⇨ 休養期(1〜2週間程度)
9月〜1月 ⇨ 通常の訓練(基礎体力の向上)
オフシーズンのトレーニング ⇨ 技術<基礎体力
シーズンインのトレーニング例
*ポイント
①週1〜3回程度の筋力トレーニングでオフシーズンに得た成果を維持する。
②トレーニングの頻度を減らし、量も試合の数や技術練習の量に応じて調節する。

下のトレーニングは通常の訓練以外で、
体力を維持するために行うものです。
月 軽い負荷×10〜15回×2〜4セット(種目間の休息は1〜2分程度)
火 パワー系30〜60%×4〜6回×3〜4セット (速い速度での運動セット間休息は2〜3分)
水 積極的休息
木 中程度の負荷(50〜70%)×8〜10回×2〜4セット(種目間の休息は1〜2分程度)
金 重い負荷(80〜90%)×3〜6回×3〜6セット(種目間の休息は3〜5分程度)
土 積極的休息
日 完全休息
積極的休息
積極的休息は、ウォーキングやヨガなど軽度な有酸素運動で血液の循環を良くして、疲労物質である乳酸の分解をスムーズにし、疲労の回復を早めることを目的としています。

疲労を貯め過ぎないことが絶対条件です。
休息もトレーニングの内ですよヽ(^∀^*)ノ
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はこれから消防士になる人、初めて救助技術指導会に出る人、来年は絶対出場したいと思っている人に向けて書いてみました。
救助技術指導会は消防職員である以上、挑戦してほしい大会です。
救助隊員ではなくても署内の選考を勝ち上がれば出場できるところが多いと思いまうので、ぜひとも頑張ってほしいと思います。
この考え方を理解して実践すれば絶対に全国大会まで行けます。

この概念を習得た隊員で、
数回全国大会枠獲得した隊員もいますので
ぜひ参考にしてみてください。(*´▽`*)ゞ
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